認知障害高齢者における一般病院看護師の身体拘束の必要性認識の現状および拘束しな い転倒予防の実施と影響要因についての多施設間横断研究

牧野 真弓*, 加藤真由美,正源寺美穂

*この論文の責任著者

研究成果: ジャーナルへの寄稿学術論文査読

抄録

【目的】本研究は,認知障害高齢者に転倒予防を行う病棟看護師の,身体拘束の必要性認識の現状および,拘束しない転倒予防の実施と,これらへの影響要因の検討を目的とした。
【方法】富山県内の 4 施設の一般病院に勤務し,認知障害高齢者を担当した経験のある病棟看護師 304 名を対象に,2019 年 1 ~ 3 月に無記名質問紙調査を実施した。主要アウトカムである認知障害高齢者への身体拘束の必要性認識は J-PRUQ 尺度を使用し,拘束しない転倒予防の実施状況は,2 件法で尋ねた。副次的アウトカムは,J-PRUQ 低下および,拘束しない転倒予防実施への影響要因とした。調査項目は,看護師の基本属性,病棟環境と病棟文化,認知障害高齢者に関する関心,認知障害高齢者への転倒予
防と身体拘束に関する意識とした。
【結果】分析対象は 238 名(有効回答率 78.3 %)であった。拘束の必要性認識(J-PRUQ)(範囲 1 ~ 5 点)の平均±標準偏差は 3.2 ± 0.60 点,必要性の高い項目は,「カテーテル抜去予防」4.26 ± 0.91 点,「ベッドからの転落予防」3.90 ± 0.95 点であった。拘束しない転倒予防を「行っている」との回答は 160 名(67.2 %),「行っていない」は 73名(30.7 %)であった。
 J-PRUQ 低下への影響要因は,病棟文化の「拘束しないと次の勤務帯の看護師に迷惑をかけると思わない(β=−0.205 ,p< 0.01)」「病棟では看護判断で拘束せず転倒予防を行っている(β=−0.176 ,p< 0.01)」と,看護師の意識の「拘束しなくても転倒を予防できる(β=−0.165 ,p< 0.01)」「転倒予防には拘束が必要であると思わない(β=−0.132 ,p< 0.05)」と,「女性(β=−0.144 ,p< 0.05)」であった。
 拘束しない転倒予防の実施への影響要因は,看護師の意識の「病棟チームの判断で拘束せず必要と思う転倒予防が行えると思う(OR;17.644 ,95 % CI;7.599-40.968)」であった。
【結論】認知障害高齢者における一般病院看護師の身体拘束の必要性認識が高い項目は,カテーテル抜去,縫合除去,栄養チューブ抜去,ベッドからの転落であった。拘束の必要性認識を低下させる要因は,認知障害高齢者に対して拘束せず転倒予防を行う病棟文化と,拘束せず転倒を予防できると思う看護師の意識であった。拘束削減に向けた看護師の行動の推進には,組織的な支援の重要性が示唆された。
本文言語日本
ページ(範囲)25
ページ数36
ジャーナル 日本転倒予防学会誌
8(1)
出版ステータス出版済み - 2021/08/30

キーワード

  • 身体拘束
  • 転倒予防
  • 認知障害
  • 高齢者
  • J-PRUQ尺度

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