抄録
富山県東部黒部峡谷の黒部峡谷鉄道(約20.1 km;宇奈月駅-欅平駅)沿いに並走する冬期歩道(幅1 m強,高さ1.8–2.1 m前後の人工トンネル)内の糞塊について,それらの分布と形状を記載するとともに,5糞塊中の糞粒のDNA分析を実施した.その結果,糞塊の排泄種はニホンカモシカCapricornis crispusであることを確認した.カモシカの糞塊は,黒部峡谷鉄道沿いのうち柳橋駅-仏石間の約1 kmの区間で,冬期歩道の両側に点在していた.糞塊の多くは10–30 cm程度の広がりを持ち,少なくとも100–200個の紡錘形の糞粒で構成され,それぞれの糞粒は密着していた.カモシカは2019年晩春から晩秋にかけて,冬期歩道内にその出入口から50–370 mの地点まで入りこみ,少なくとも冬期歩道内を100–740 mを移動した.冬期歩道は人工洞窟に区分される地下空間であるものの,完全な暗黒の空間を伴わないため,カモシカは冬期歩道に入りこみ長距離を移動できた.なお,現時点でカモシカが冬期歩道に入りこんだ理由は不明である.
寄稿の翻訳タイトル | Fecal pellets of Japanese serow (Capricornis crispus) within the Touki-hodou Tunnel adjacent to Kurobe Gorge Railway in eastern Toyama Prefecture, central Japan |
---|---|
本文言語 | 日本 |
ページ(範囲) | 249-260 |
ページ数 | 12 |
ジャーナル | 哺乳類科学 |
巻 | 61 |
号 | 2 |
DOI | |
出版ステータス | 出版済み - 2021 |