判例における「グローバル・スタンダード」の扱いに関する一試論:診療録の開示記録に関する最高裁判決を起点として

研究成果: ジャーナルへの寄稿学術論文

抄録

情報不開示決定取消等請求事件(最高三小令和三年六月一五日判タ一四八九号二九頁)の宇賀裁判官の補足意見において、刑事施設における自己の医療情報へのアクセスの保障は、「グローバル・スタンダード」になっている、という理由が示された。こうした「グローバル・スタンダード」という文言が有効に機能する場合を考えるに、第一説として、これだけが理由ではなく補足意見でもあることから、国内法を踏まえた解釈に加えての補強理由としてとして用いられたと考えられる。国内法の解釈に加えて、それへの補強としての諸外国やグルーバルな標準として受入れられている実態や規範があるとすれば、それはその判決の正しさを証明する理由となりうるからである(これを「補強説」とする。)。第二説として、国内法令に本件記録開示の方式まで規定すべきであるにもかかわらず規定できていないため、その欠缺を埋めるためにグローバル・スタンダードとして認められている規範を代わりに用いているとする考え方もある(これを「国内法令の代替説」とする。)。これら二説を仮説として、判例における「グローバル・スタンダード(国際標準)」の用いられ方を検討すると、「国内法令の代替説」が妥当すると筆者には思われる。加えて、その事実は、国内法令の欠如がそもそもの課題として存在することから、まずは立法不作為により国民への不利益が出かねない状態を打破する対処(立法)こそ重要と考える。
本文言語日本
ページ(範囲)109
ページ数135
ジャーナル法学新法「小賀野晶一先生退職記念論文集」
129(10・11)
出版ステータス出版済み - 2023/03/15

キーワード

  • グローバル・スタンダード
  • 判例
  • 国際標準
  • 情報不開示決定
  • 診療録
  • 刑務所医療

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