脳刺激型補聴器の実現に向けた、時間変化する複雑音の脳内符号化機構の解明

  • Ito, Tetsufumi (研究代表者)
  • 小野, 宗範 (研究分担者)
  • 高橋, 宏知 (研究分担者)

プロジェクトの詳細

研究開始時の研究の概要

本研究の目的は、言語音のような時間変化する複雑音の脳内情報表現様式を単一細胞レベル及び神経回路レベルの両面から解明することによって、下丘における最適な脳機械インターフェイス(BMI)刺激様式を明らかにすることである。従来のBMI研究では神経回路を構成する細胞の「個性」には頓着せず、電気刺激によって無差別に神経回路の刺激を行ってきたが、申請者の過去の研究から、局所回路を構成する細胞には「個性」があり、複雑音を脳内で再生するためには細胞種特異的な刺激法と空間に限局した刺激法の両方を考慮に入れる必要があると考えた。この点が類似研究にはない独自の着眼点である。

研究成果の概要

聴覚伝導路のハブである下丘の構成細胞および神経回路を考慮して最適なbrain-machine interface (BMI)刺激様式を明らかにするため、3つの実験を実施した。そして、(1)聴覚伝導路の細胞種構成を考慮した神経回路の機能構築の解明に成功し、(2)聴覚伝導路の多数の神経細胞からの神経活動記録、光刺激によるその活動制御系、大規模データの解析方法、の確立に成功し、さらに(3)動物の聴覚認知の行動学的計測モデルの確立と神経活動の制御技術の確立にも成功した。以上の確立した技術を投入して、聴覚BMIの具体的な構築について今後進めていきたい。

研究成果の学術的意義や社会的意義

人間のコミュニケーションはその多くを音声に頼っており、難聴は人生の質を大いに低下させる。先天的ないし後天的に失われた聴覚を再獲得する方法としてBrain-Machine Interface (BMI)の一種である脳刺激型補聴器が理想的な解決策である。しかしながら、患者の脳を電気刺激した研究では、言語音のような時間変化を伴う複雑な音の認知は成功していない。本研究は、言語音のような時間変化する複雑音の脳内情報表現様式を単一細胞レベル及び神経回路レベルの両面から解明することに成功した。これらの研究成果から、今後下丘における最適なBMI刺激様式が決定できると期待される。
ステータス終了
有効開始/終了日2019/04/012023/03/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥17,160,000

キーワード

  • 聴覚
  • 神経回路網
  • デコーディング
  • オプトジェネティクス
  • brain machine interface
  • 神経回路
  • 符号化