本研究は、計算機を用いて抗がん剤治療の薬効を予測可能にする研究であり、研究成果を臨床現場の治療への利用が可能な世界初の研究である。肺がん細胞で新規変異体の発見が続くEGFRに対して、分子標的薬(EGFR-TKI)の中から治療薬の選択を実現する。
肺がんのEGFR二量体の単独変異と複数変異について「知られている変異部位以外にもアミノ酸置換が存在する」という仮説を検証し、L858R変異またはA871G変異ではいずれもエルロチニブは有効だが、L858RとA871Gの複数変異を生じている患者では無効いう論文報告を、分子シミュレーションで再現できた。この結果は、EGFR遺伝子検査は変異部分だけでは不十分で、シーケンス解析が必要であると示唆している。また、この解析技術基盤が多数の病態解析等に応用可能であることも確認できた。
本研究の学術的・社会的意義は、肺がんの分子標的薬のEGFR-TKI世代別にin silico薬効予測を可能にすることである。特に肺がん細胞で新規変異体の発見が続くEGFRから、抗がん剤選択の基準を提供する点は意義深い。薬効予測の実現により副作用の少ない効率的・効果的で安全な医療を実現する。またこの研究で得られた成果は、あらゆる分子標的薬の評価や創薬にも応用可能で、波及効果は大きい。また解析技術基盤としては、病態研究への応用が可能である。
ステータス | 終了 |
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有効開始/終了日 | 2021/04/01 → 2024/03/31 |
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