プロジェクトの詳細
説明
クロマチン繊維がとる三次元構造は、転写をはじめとする様々な核内現象の舞台となる重要な基盤構造である。しかし、10nmクロマチン繊維よりも高次の階層における収納機構については不明な点が多い。本研究課題では、その実体を解明するために、真核生物ゲノムの機械的特性(DNA分子の硬さ・柔らかさの特性)を切り口にして二つの研究を行なっている。ひとつは柔軟性における特異領域の生物学的意義の解析、もうひとつは、間期染色体構造のモデル構築である。本年度は、後者に大きな進捗が見られたので、以下にその成果を報告する。昨年度までに、独自に測定したDNA分子の持続長のデータ、出芽酵母のゲノム配列を基に'予測'されたヌクレオソームのポジショニングのデータ(Segal et al.,Nature,2006)および細胞核の大きさを基にすることにより、間期染色体構造のモデル化に成功していた。さらに、実験データとの比較により、実際の核内構造をよく反映したモデルであることを明らかにしていた。そこで本年度は、まず'実測'されたヌクレオソームのポジショニングのデータ(Kaplan et al.,Nature,2009)を用いた間期染色体構造の予測を行なった。その結果、昨年度までにSegalらのデータを用いて予測した構造と比較して顕著な違いはみられなかった。すなわち、ゲノム配列と細胞核の大きさが分かれば、任意の生物種の間期染色体構造を予測できることが示唆された。また、昨年度までに構築した間期染色体のモデルは、対象とする1本の染色体を除く残りの15本の染色体の存在を考慮に入れないモデルであった。そこで、一倍体の出芽酵母がもつ全16本の染色体を、核と大きさの等しい直径2μmの球の空間にモデル化した結果、実際の核内構造と同様に、全ての染色体が所与の空間を互いにうまく分け合って収まっていることを明らかにした。
ステータス | 終了 |
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有効開始/終了日 | 2009/04/01 → 2012/03/31 |