低分子量と熱力学的安定性を両立したNIR-II色素の創製と蛍光プローブへの応用

プロジェクトの詳細

研究開始時の研究の概要

本研究は,波長 1000 nm ~ 1400 nm の第 2 近赤外光学窓領域で光吸収・蛍光を示す色素小分子(NIR-II 色素)をデザイン・創製し,蛍光プローブとして応用可能性を検討する。本研究の特徴は,申請者オリジナルの架橋キサンテン色素を分子デザイン・合成のプラットフォームとし,分子内の電荷を非局在化させることで,小さな分子サイズと熱力学的安定性を両立した新たな NIR-II 色素を創製することである。実験化学と計算化学を組み合わせた本研究は,小さな NIR-II 色素の設計指針の構築につながるとともに,医療・薬学分野および有機合成化学分野に資する機能性分子を提供する基盤研究となる。

研究成果の概要

研究代表者は、低分子量かつ熱力学的に安定な近赤外色素の創出を目的に、独自に開発した『架橋キサンテン色素』を分子基盤とした色素開発研究をおこなった。本研究を通じて以下の成果を得ることができた。[1]フルオレセイン型架橋キサンテン色素(BFL)の、合成法・光物性・機能を解明し、350g/mol以下の小分子NIR-I, II色素を開発に成功した。[2]ロドール型架橋キサンテン系色素(BRO)が、無極性環境中でのみ発光する『無極性選択発光』という新現象を示すことを見出し、センサーやセキュリティーインクとしての有用性を見出した。

研究成果の学術的意義や社会的意義

「大きく・不安定であった」近赤外色素を「小さく・安定」にするための方法論は、新たな近赤外テクノロジーの開拓を可能にする点で材料化学分野に対して学術的意義を有する。また、本研究で発見した「無極性選択発光」現象は、新たな光物理現象として、光化学や理論化学分野の発展に資する。さらに、本研究で創出した色素を用いた水中での近赤外光レドックス触媒反応は、『生体の光レドックス治療』の第一歩と考えられるため、新たな光治療の創出に貢献する点で社会的な意義を有する。
ステータス終了
有効開始/終了日2022/04/012024/03/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥4,680,000

キーワード

  • 近赤外光
  • キサンテン色素
  • 架橋キサンテン色素
  • 低分子量
  • 熱力学的安定性
  • 架橋フルオレセイン
  • 架橋ロドール
  • 無極性選択発光
  • 光レドックス触媒反応
  • 近赤外
  • 光治療
  • 近赤外蛍光
  • NIR-II
  • 熱力学的安定
  • 蛍光プローブ