Abstract
富山県東部黒部峡谷の鐘釣地域に位置するサル穴(鍾乳洞)は、測線総延長で100 mを超える竪横複合型の洞窟であり、これまでに少なくとも6個体のニホンザル化石を産している。これら化石は、6箇所の産出地点ごとに別個体の化石が産し、3地点で壊れ易い頭蓋骨が良好な状態で保存され、かつ、産出部位の残存率が80~90 %に達する例もみられる。即ち、化石は原地性ないし準原地性であり、洞口から約20 m続く横穴にニホンザルが侵入し、竪穴に落ち込んで化石化したことを示唆している。
2011年6月13日、洞口から竪穴に至る横穴の広い範囲において、ニホンザルによる多量の糞を確認した。これら糞は、2010年度冬季に排泄されたものであり、洞口からの光を視認できる限界の空間まで、平面的なまとまりをもって分布している。また、糞が特に密集する場所は、洞口からの降雪や寒風を効果的に避けることが可能な地形的特徴を持つ。即ち、ニホンザルは冬季に防寒を目的として、洞窟を利用しているといえる。なお、ニホンザルの洞窟利用は、2008年度から2010年度の3年間の冬季では、2010年度冬季にのみみられる現象であり、2010年度冬季における積雪量の増加と相関していると予想される。
ニホンザル化石5試料の炭素14年代のうち、最も古いものは弥生時代前期に至る。このことは、今回観察されたニホンザルの洞窟利用が偶発的なものではなく、少なくとも弥生時代から現在に至り、継続されている生態戦略であることを示している。そして、ニホンザル化石の産状は、冬季洞窟利用を想定することで合理的に説明可能である。
筆者らは、鐘釣地域においてサル穴を含む4つの洞窟でニホンザルの糞の密集を確認している。また、明治時代末における黒部川支流の黒薙川沿いの探検記録中に、ニホンザルの洞窟利用の記述を見出している。現時点で得ているデータを基に、ニホンザルの洞窟利用を議論したい。
2011年6月13日、洞口から竪穴に至る横穴の広い範囲において、ニホンザルによる多量の糞を確認した。これら糞は、2010年度冬季に排泄されたものであり、洞口からの光を視認できる限界の空間まで、平面的なまとまりをもって分布している。また、糞が特に密集する場所は、洞口からの降雪や寒風を効果的に避けることが可能な地形的特徴を持つ。即ち、ニホンザルは冬季に防寒を目的として、洞窟を利用しているといえる。なお、ニホンザルの洞窟利用は、2008年度から2010年度の3年間の冬季では、2010年度冬季にのみみられる現象であり、2010年度冬季における積雪量の増加と相関していると予想される。
ニホンザル化石5試料の炭素14年代のうち、最も古いものは弥生時代前期に至る。このことは、今回観察されたニホンザルの洞窟利用が偶発的なものではなく、少なくとも弥生時代から現在に至り、継続されている生態戦略であることを示している。そして、ニホンザル化石の産状は、冬季洞窟利用を想定することで合理的に説明可能である。
筆者らは、鐘釣地域においてサル穴を含む4つの洞窟でニホンザルの糞の密集を確認している。また、明治時代末における黒部川支流の黒薙川沿いの探検記録中に、ニホンザルの洞窟利用の記述を見出している。現時点で得ているデータを基に、ニホンザルの洞窟利用を議論したい。
Translated title of the contribution | Positive cave use by Japanese macaques (Macaca fuscata) along Kurobe Gorge, eastern Toyama Prefecture, central Japan |
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Original language | Undefined/Unknown |
Pages (from-to) | 110 |
Journal | Primate Research Supplement |
Volume | 28 |
Issue number | 0 |
DOIs | |
State | Published - 2012 |