CREBHによる小胞体恒常性維持機能を介した肝がん発症抑制機構の解明

  • 齋藤, 穂高 (研究代表者)

プロジェクトの詳細

研究開始時の研究の概要

栄養代謝を制御する小胞体膜貫通型転写因子CREBHの欠損(KO)マウスでは、通常食では正常だが、高栄養食餌摂取により肝がんを発症する。この結果は、CREBHが栄養代謝異常による肝がん発症を抑制する新規がん抑制因子であることを示唆したが、CREBHが高栄養条件下でどのように肝がん発症を抑制しているか、その詳細なメカニズムはほとんど理解されていない。本研究では、CREBHの小胞体恒常性の維持機能に着目し、高栄養条件下における肝がん発症メカニズムを解明する。本研究で得られた知見により、先進国における解決すべき喫緊の課題である生活習慣病から生じる肝がんの新たな治療戦略の構築が期待される。

研究成果の概要

過食や過度なアルコール摂取による肝臓での栄養代謝異常は、アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝を誘発しその悪性化は肝硬変を経て肝がんを発症する。小胞体結合型転写因子CREBHが栄養代謝異常による肝がん発症を抑制する新規肝がん抑制因子として見出されたが、CREBHによる肝がん発症の抑制機構については未解明である。本研究ではCREBH KOマウス肝臓を用いた網羅的解析により、がん遺伝子としても同定されているERファジー受容体の遺伝子発現がCREBH KOにより変動することを見出した。さらにマウス初代肝細胞を用いてCREBHがERファジー受容体の遺伝子・タンパク質発現を制御することを明らかにした。

研究成果の学術的意義や社会的意義

肝臓は、コレステロール生合成や脂肪酸合成、栄養代謝を制御する重要な臓器である。過度なアルコール摂取や過食は肝臓の栄養代謝を乱し、アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝を誘導し、慢性的な脂肪肝は悪性化し、肝硬変を経て肝がんを発症する。しかし、マウスに高栄養食餌を摂取させ栄養代謝異常を生じさせても、脂肪肝炎程度しか生じず、肝がん発症まで至らない。栄養代謝異常による肝がん発症を模倣するヒトのマウスモデルが存在しないことは、そのメカニズム解明の障害になってきたが、本研究では、栄養代謝異常により肝がんを発症するCREBH KOマウスを用いることで、栄養代謝異常による肝がん発症要因の一端を明らかにした。
ステータス終了
有効開始/終了日2022/08/312024/03/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥2,860,000

キーワード

  • CREBH
  • 非アルコール性脂肪肝
  • 肝がん
  • ER phagy
  • ER stress
  • 生活習慣病
  • 肝臓がん
  • 脂質代謝