AQP1を起点とする妊娠高血圧症候群における胎盤機能不全の理解と治療戦略の創出

  • 室井, 慎一 (研究代表者)

プロジェクトの詳細

研究開始時の研究の概要

妊娠高血圧症候群 (HDP) は周産期に生じる疾患の中で最も頻度が高いにも関わらず,効果的な治療が存在しない.申請者は,HDPモデルマウスの胎盤で血管新生に関わる水チャネルアクアポリン1 (AQP1) が減少していることを見出しており,発症原因である胎盤の異常に関わる可能性が示唆される.本研究ではHDPの病態形成に対する胎盤AQP1減少の意義の解明および新規治療薬の創製を目的とする.そのために,HDPモデルマウス胎盤のAQP1減少メカニズムの解明およびその減少を抑制可能な和漢薬の探索を行う.これらの結果から胎盤AQP1に着目したHDPの発症メカニズムの解明と和漢薬による新規治療戦略を提唱する.

研究成果の概要

妊娠高血圧症候群 (HDP) の発症には胎盤の形成不全が病因の一つであると考えられているが詳細は不明である.本研究では,HDPモデルマウス胎盤におけるAQP1発現減少メカニズムおよび薬理学的に調節可能な和漢薬の探索を行った.妊娠各時期の胎盤組織を用いた解析から,炎症性サイトカインによるAQP1の減少によって胎盤組織の脆弱性が亢進し,胎盤組織の機能不全が生じている可能性が示唆された.HDPで亢進するRAA系を抑制可能な複数の生薬エキスおよび成分化合物を見出した.本研究の成果は妊娠高血圧症候群の新規治療法の確立につながる有用な基礎データであると考えられる.

研究成果の学術的意義や社会的意義

深刻な出生率の低下の背景には,社会が妊娠の機会を奪っているだけでなく妊娠高血圧症候群などの妊娠時疾患の存在も重要であるにも関わらず,有効な治療法の確立および詳細な病態形成メカニズムの解明がなされていない.本研究では妊娠高血圧症候群の病態形成メカニズムのうち,胎盤組織傷害におけるAQP1発現減少のメカニズムをモデルマウスを用いて明らかにした.さらに,妊娠高血圧症候群の新規治療薬を使用経験の豊富な和漢薬から探索することで,妊娠への影響が少ない可能性のある候補化合物を見出すことができた.本研究の成果は妊娠高血圧症候群の治療満足度の向上につながる有用な基礎データであると考えられる.
ステータス終了
有効開始/終了日2022/08/312024/03/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥2,860,000

キーワード

  • 妊娠高血圧症候群
  • アクアポリン
  • 和漢薬
  • レニンアンジオテンシン系
  • アポトーシス
  • サイトカイン
  • 心肥大