さらに、ABO遺伝子発現において上流域に認められるNbox配列によりnegativeに制御されていること及びこの抑制領域であるNboxにはRACPと命名したタンパク質が結合することを明らかにした。NboxはbHLHファミリーによって認識される。転写調節因子であるbHLHファミリーは、様々な器官・細胞タイプの発生段階で重要な役割を果たしている。以前我々は、ABO遺伝子とα(1,2)フコース転移酵素をコードしたFUT1及びFUT2遺伝子は共発現していることを報告している。FUT1及びFUT2遺伝子上流域の塩基配列を調べたところ、bHLHタンパク質の推定結合サイトが認められた。このことからFUT1及びFUT2遺伝子の発現においても、bHLHファミリーは重要な役割を果たしていると考えられる。それ故に、今回見つけたRACPを含むNbox結合タンパク質は、ABH抗原に関与する糖転移酵素をコードする遺伝子の発現段階において、協調的発現調節に関わっていることが示唆された。