Scoparia dulcisは生物活性ジテルペンscopadulcic acid B (SDB)やscopadulciolを産生する。これらのジテルペン類は若い葉で多く生産されることが判明しているが、その生合成制御機構は不明のままである。本研究では、これらの有用ジテルペン類の高効率生産法の確立を目指し、ポストゲノム手法であるプロテオームおよびメタボローム解析技術を用いて、それらの生合成制御機構を解明することを目的にしている。前年度にはS. dulcisの培養組織をMeJA処理によりSDB生産が増強されることを明らかにした。そこで、本年度はMeJA処理および非処理組織より経時的にタンパク質を抽出し、二次元電気泳動を行った。この結果、MeJA処理2日後以降で発現量の増加したスポット12個と減少したスポット17個を確認することができた。それらのスポットをゲルより切り出し、in gel消化を行った後にMALDI TOF-MSによりpeptide mass fingerprinting解析を行った。その結果、有意に発現量が増加したスポットのうちacetyl-CoA carboxylase、calcineurin B-like proteinやascorbate peroxidaseなどを同定できた。一方、発現量が減少したスポットでは、RuBisCOやElongation factor 1-alpha、ATPase beta subunitなどを同定することができた。以上の結果から、MeJA処理によって一次代謝に重要なタンパク質(RuBisCOなど)の発現が抑制され、その一方でcalcinulin B-1ike proteinのようなCa^<2+>シグナル伝達に関与するタンパク質の発現が誘導されることが明らかとなった。現在、同定できなかったスポットについてPSDによる解析等を進めている。