また,ヤコビ多様体の極限をどのように考えるかも問題である。アーベル多様体のモデュライ空間のコンパクト化はまず最初に佐武により与えられた。その後,他のコンパクト化も考えられた。アーベル多様体とその上の関数体(アーベル関数体)を一緒に考えたとき,その極限にはアーベル関数体の極限としての関数体をもつことを要請するのは極めて自然である。アーベル関数体の極限の関数体は代数的加法定理を許す有理型関数のなす体とするのもまた自然な考えである。そのような関数体は、Weierstrassが主張していたものであり,それを決定した。この観点からは佐武コンパクト化が一番自然なコンパクト化であり,上の極限移行では佐武コンパクト化での極限とそれに対応する閉リーマン面の退化を考えている。