プロジェクトの詳細
説明
本研究は溶液内反応の動的過程に注目し、時間を導入したいわば動的分析化学の展開を目指した。特に反応機構を明確にした溶液内化学反応に立脚した速度論的分析法を開拓するために、錯形成反応の速度を支配する要因を明かにした。また反応機構解明のキ-ポイントは動的過程中に存在する活性中間体の挙動であるので、能動的に不安定短寿命反応中間体を生成させ、その構造化学的研究を行った。これは動態分析という観点からも希求されるべきものであり、これらを遂行する新しい方法論の開発もまた必須であった。本研究では次のような研究成果を得た。(1)方法論の開発:(a)レーザー、ラピッドインジェクションおよび高圧ストップトフローNMR法、(b)エネルギー分散型および角度分散型ストップトフローEXAFS法を開発した。(2)金属イオンの溶媒和構造と反応性:(a)EXAFS法により種々の溶媒中における金属イオンの溶媒和構造を決定した。(b)溶媒分子のかさ高さおよびキレート効果に注目して溶媒交換反応機構を特に圧力効果を指標に解明した。(3)配位子の構造と錯形成反応機構:(a)メタロポルフィリンの生成機構をポルフィリン環面の歪みの観点から解明した。(b)有機スズのアミノポリカルボン酸との錯形成反応を配位数と構造との関係から明らかにした。(c)三元錯体の安定度定数から金属イオンの取り込み機構を解明した。(d)新規な三角両錐型パラジウム(II)錯体の置換反応機構を明らかにした。(4)速度論的分析法への適用:(a)ポルフィリン環に歪みを与えると、メタロポルフィリンの生成速度が極めて速くなり、金属イオンの選択性を高めることができた。(b)三元錯体の生成平衡を立体構造化学的に研究することによって、金属イオンの選択的分離および速度論的分析の可能性を提示した。(5)不安定短寿命中間体の構造化学研究:(a)数秒の寿命のHg/Cu二核ポルフィリン中間体およびペルオキソクロム(VI)中間体の構造を決定した。(b)アスコルビン酸の酸化反応によって生成するラジカル中間体の構造と反応性を解明した。(c)クロム(III)ポルフィリン錯体の5配位中間体をレーザー分解で検出し、その反応性を解明した。以上のように、(a)金属イオンの溶媒和構造と溶媒交換及び錯形成反応速度との関係、(b)配位子の構造と錯形成反応機構との関係を解明し、(c)錯形成反応速度を利用した速度論的分析法を提示した。また、(d)反応中間体の構造化学的研究をするための方法論を開拓し、動態分析への指標を与えた。
ステータス | 終了 |
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有効開始/終了日 | 1992/04/01 → 1995/03/31 |
フィンガープリント
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