透析患者の臨床試料を用いた痒み因子の同定と臨床治療への応用

  • Andoh, Tsugunobu (研究代表者)
  • MOMOSE, Akishi (研究協力者)

プロジェクトの詳細

研究成果の概要

慢性腎不全による血液透析患者の痒みの発生機序の解明を試みた。透析患者の血清中のβ2マイクログロブリン(β2-MG)が増加していた。マウスを用いた実験からβ2-MGが、痒み因子であることに加え、TRPV1陽性一次感覚神経を直接活性化することで痒みを誘発することも明らかにした。慢性腎不全誘発掻痒マウスモデルの開発に成功し、β2-MG、IL-31、並びにアラキドン酸代謝物がその痒みに関与することを見出した。更に、慢性腎不全患者の皮膚では、IL-31等の痒み因子が表皮で発現していることも見出した。以上の結果から、これら痒み因子が、慢性腎不全の痒みの新たな治療ターゲットになることが示唆される。

研究成果の学術的意義や社会的意義

慢性腎不全による透析患者は、皮膚の乾燥並びに非常に激しい痒み訴える。このことは、透析自体による生活の質の低下に加え、痒みによる苦痛並びに不眠症に悩まされる。従って、痒み抑制は、患者にとって非常に重要である。しかし、このような痒みは痒みの第一選択薬である抗ヒスタミン薬が無効である場合が多く、新規治療薬の開発や治療ターゲットの発見が重要である。本研究において、透析患者の臨床試料並びに新たに開発した病態動物モデルを用いて痒みの新規治療ターゲットとしてヒスタミン以外にβ2 microglobulin、IL-31及びアラキドン酸代謝物を見出したことは学術的にも社会的にも非常に意義のある成果を得た。
ステータス終了
有効開始/終了日2016/04/012019/03/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥3,640,000

キーワード

  • 痒み
  • 慢性腎不全
  • β2マイクログロブリン
  • ヒスタミン
  • ロイコトリエンB4
  • トロンボキサンA2
  • インターロイキン-31
  • 起痒物質
  • 透析