近世における中国・朝鮮・日本三国の〈西遊記〉演劇の比較研究

  • 磯部, 彰 (研究代表者)

プロジェクトの詳細

研究概要

明清時代,『西遊記』は小説として読まれる一方,演劇にもしくまれ,中国各地域及び東アジア諸国で流布した。一般的には,小説がもとになって,その後に演劇の〈西遊記〉劇が生まれたとされたが,実は世徳堂刊本西遊記から清白堂刊本西遊記が生み出され,それから楊致和編本・朱鼎臣編本,そして清代の『西遊証道書』が作られたことが判明した。他方,演劇では『楊東来先生批評西遊記』が明末清初に伝わり,小説系〈西遊記〉と演劇系〈西遊記〉が融合して,『江流記』という内府演劇が作られたのである。当時,朝鮮朝では,清朝に朝貢して,内府において〈西遊記〉劇を観ていたが,彼らは小説西遊記と演劇のそれとは全く同一の内容のものと考え,本国に戻っても格別には演劇西遊記について,言及することがなかった。そのような情況のために,演劇方面では,儒教倫理を基本にすえた『伍倫全備』劇のような〈忠〉〈考〉を説く演劇を,これも中国語学習用に使って受容した。朝鮮両班による〈西遊記〉劇の軽視は,結果として,鳳山タルチュウムに『西遊記』劇を活用したものの,その出典は小説であって,中国のように独自の〈西遊記〉劇世界を開拓するには到らなかった。これに対し,日本人は,明清代の小説『西遊記』諸本及び戯曲西遊記等を輸入し,その表面的理解に基づいて,伝統的な仏教思想をまじえて『五天竺』などの演劇を,自由裁量によって制作した。中国・朝鮮・日本三国は,小説『西遊記』を重視した点は一致するが,演劇では国情の相違によって,〈西遊記〉劇への扱いもかなり違ったものとなった。
ステータス終了
有効開始/終了日1992/01/011993/12/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥1,600,000

キーワード

  • 楊東来先生批評西遊記
  • 楊致和編本
  • 江流記
  • 儒教倫理
  • 朝鮮朝
  • 鳳山タルチュウム
  • 日本人
  • 図像
  • 伍倫全備諺解
  • 朝鮮
  • 五天竺
  • 西遊記図説
  • 武打もの
  • 清内府劇
  • 朱鼎臣編本
  • 仇討ち
  • 貞烈観
  • 三蔵宝巻
  • Yang tung-lai hsien-sheng Hsi yu chi
  • a folk drama
  • China
  • Confusianism
  • Koria
  • Pengsamtaruchum
  • Japan