農薬曝露による神経シナプス形成への影響評価と病態発症機構の解明

  • 和泉, 宏謙 (研究代表者)

プロジェクトの詳細

研究開始時の研究の概要

農薬曝露による神経系への影響として、高次脳機能障害を伴う発達障害が問題視されている。本研究では、グルホシネート(有機リン系農薬)やデルタメトリン(ピレスロイド系農薬)の曝露による神経シナプス形成への影響評価を通して、神経発達障害の病態発症機構の解明に取り組む。農薬曝露に起因するシナプス病態を明らかにすることで、多様な神経発達障害の治療戦略の基盤構築に大きく貢献できる。

研究成果の概要

本研究では、農薬曝露が神経シナプス形成に及ぼす影響評価を通して、神経発達障害の病態発症機構を解明することを目的とした。有機リン系農薬のグルホシネートを曝露した胎児では、その培養神経細胞のシナプス誘導量が変化することを示した。また遺伝子発現解析から、グルホシネート曝露による神経発達の遅延が示唆された。一方、Ptprd遺伝子変異導入マウスの作製・解析を通して、この遺伝子が特定のシナプス誘導に寄与することを示した。また、シナプス誘導の競合関係を遺伝的に偏らせたマウスの作製・解析から社会性行動が変化することを示した。

研究成果の学術的意義や社会的意義

本研究によって、これまで農薬曝露による中枢神経系への影響では明らかになっていなかった神経シナプスにおける病態を新たな知見として得られたことは学術的に大きな意義がある。本研究の応用により、農薬を含む化学物質が高次脳機能に与える影響を簡便且つ高感度に検出可能なリスク評価法の開発が期待できる。また、シナプス病態から学習・行動異常を引き起こす細胞集団の特徴付けを行うことで、神経発達障害に対する治療戦略の基盤構築に結び付くと考えられる。
ステータス終了
有効開始/終了日2019/04/012022/03/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥4,290,000

キーワード

  • 農薬曝露
  • 神経シナプス形成
  • 発達神経毒性
  • 有機リン系農薬
  • ピレスロイド系農薬
  • 神経毒性