プロジェクトの詳細
研究開始時の研究の概要
自閉症スペクトラム障害は比較的早い時期よりコミュニケーションがうまくとれない、あるいはステレオタイプの行動をとるなどとして認識されているが、他の小児の精神疾患(注意欠陥多動性障害、ディスレクシア、統合運動障害)と同様に多価不飽和脂肪酸の不足あるいはバランス異常が示唆されている。また、妊娠期間中は胎児形成のためにω3系多価不飽和脂肪酸が多く使われ、十分なω3系多価不飽和脂肪酸を摂らないと母親の組織中で不足し、母子への健康に影響する可能性がある。本研究では出生コホートの既存の生体試料および情報を使ってω3系多価不飽和脂肪酸と自閉症スペクトラム障害との関連を調査する。
研究成果の概要
出産時に得られた臍帯血の血清ω3 系多価不飽和脂肪酸と5歳時点での自閉症スペクトラム障害のリスクとの関連について、症例75名と対照150名の1:2のコホート内症例・対照研究を行った。その結果、ω3 系多価不飽和脂肪酸では、両群間で特に有意差は認められなかった。また、ω3 系多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸を三分位に分けて、10の交絡因子で補正の上ロジスティック回帰分析を行った結果、最低三分位と比較して第2三分位および第3三分位ではオッズ比で特に有意差は認められなかった。また、トレンド検定でも特に有意な関連は認められなかった。
研究成果の学術的意義や社会的意義
自閉症スペクトラム障害の原因はまだ完全には解明されておらず、遺伝的要因、環境要因、神経発達の異常など、複数の要因が関与している可能性がある。いくつかの症例対照研究では、神経発達に重要であるω3系多価不飽和脂肪酸が関与している可能が示唆されているが、出生時の臍帯血中ω3系多価不飽和脂肪酸とその後の自閉症スペクトラム障害との関連をみた研究は少ない。そういった中、本研究の結果は重要な知見と考えられる。統計学的に有意な関連は認められなかった理由としては、日本の妊婦では、欧米と比べてこの関連が認められるほどω3系多価不飽和脂肪酸の摂取が低いとは言えないのかもしれない。
ステータス | 終了 |
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有効開始/終了日 | 2020/04/01 → 2023/03/31 |
資金調達
- Japan Society for the Promotion of Science: ¥4,290,000
キーワード
- ω3系多価不飽和脂肪酸
- 自閉症スペクトラム障害
- コホート内症例・対照研究
- コホート内症例対照研究
- 臍帯血
- エコチル調査
- 子どもの健康と環境に関する全国調査