生殖免疫の立場から見た不育症、早産、妊娠高血圧症候群の病態解明

  • 齋藤滋 (研究代表者)
  • 中島, 彰俊 (研究分担者)

プロジェクトの詳細

研究概要

異物である胎児が拒絶されないことを免疫学的に検討し、また流産、早産、妊娠高血圧腎症(PE)などの妊娠合併症の免疫状態を対比することは疾患の予防・治療にも繋がる。本研究は免疫系を新たなパラダイムであるTh1/Th2/Th17/制御性T細胞(Treg)で検討し、さらに新たな細胞集団である制御性NK細胞(NKreg)につながった。(1)Tregからの解析:Treg細胞はアロ妊娠の際の着床や妊娠初期に重要であること、妊娠後期ではTreg細胞が減少しても妊娠異常が生じないことを明らかにした。また父親抗原を認識するTreg細胞が着床前に子宮領域リンパ節で増加し、着床直後に子宮で増加することを見い出した。(2)NKreg細胞からの解析:NKreg細胞がCD25を発現し、妊娠子宮に増加すること、NKreg細胞は免疫抑制に作用するIL-10、TGF-βを産生するが、拒絶に関与するIFNγ、TNFαの産生はないことを証明した。またLPSやpoly(I:C)を妊娠マウスに投与すると流産が引き起こされるが、NKreg細胞は炎症を抑制する作用があることを証明した。(3)Th17細胞からの解析:流産例では進行流産になると子宮内のTh17細胞が増加し、好中球も増加するが、臨床症状に乏しい初期流産では子宮内Th17細胞は変化しなかった。早産例では絨毛膜羊膜炎がIII度(最も進行したもの)では羊水中のIL-17が増加し、子宮内にもTh17細胞が増加した。IL-17はTNFαと協調し、羊膜細胞からのIL-8の産生を亢進させることも見い出した。(4)妊娠高血圧腎症(PE)の際の免疫:PEでは末梢血T細胞、NK細胞からのVEGFの産生が低下しており血管新生阻害の要因になること、Galectin 1発現が低下しトレランス機構が破綻していること、T細胞中のgranulysinが増加しており、かつTreg細胞も減少し拒絶反応が起こりやすい状況にあることを見い出した。
ステータス終了
有効開始/終了日2008/01/012010/12/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥19,240,000

キーワード

  • 制御性T細胞
  • 妊娠
  • 着床不全
  • 流産
  • 早産
  • 妊娠高血圧腎症
  • IL-17
  • 制御性NK細胞
  • 妊娠高血圧症候群
  • Granulysin