プロジェクトの詳細
説明
新しく開発された遺伝性てんかんラット(IGER)の神経病理学的研究を行いその本態を明らかにし、ヒト側頭葉てんかんモデルとしての有用性を検証する為に、2-12カ月の遺伝性てんかんラットと同月令の対照動物の脳についてHE染色、ニッスル染色により一般的神経病理学的観察を行った。更にGFAP免疫組織化学によりアストログリア細胞の変化、Timm染色により苔状線維の観察を行った。対照動物はIGERとウィスターラット(Izumo系)の雑種一代を用いた。IGERでは痙攣発作を発現し出す以前の生後2カ月の全ての動物において、海馬体の神経細胞の種々なる配列異常が認められた。それらは海馬錐体細胞の微少な配列の乱れや、配列の途絶あるいは異常な神経細胞の集簇形成である。これらの神経微少形成異常は遺伝的に決定された神経組織形成期に於ける神経細胞の増殖あるいは移動の障害によると考えられる。全般化痙攣を反復した動物では歯状回内分子層に苔状線維の発芽がTimm染色法により明らかにされた。加齢に従いまた痙攣発作が増強すると共に発芽の程度の増強する傾向を示した。GFAP染色では主として海馬領域においてGFAP陽性アストログリア細胞の増数とその突起の腫大化が認められ海馬硬化の所見を呈していた。微少形成異常、苔状線維の発芽、海馬硬化は対照動物には認められなかった。遺伝性てんかんラット脳に見られた以上の3つの形態学的所見は、ヒト側頭葉てんかん患者の脳に見られる病理形態学的特徴と一致するものである。このように遺伝性てんかんラットとヒト側頭葉てんかんとの間には病理形態学的類似性が見られ、モデル動物としての基準をクリア-していると考えられた。今後は最終基準である、病因の一致性を遺伝仔レベルで解明する予定である。
ステータス | 終了 |
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有効開始/終了日 | 1996/04/01 → 1997/03/31 |