富山湾海底の地下水湧出の実態とその海洋環境における役割の解明

  • 張, 勁 (研究代表者)

プロジェクトの詳細

研究概要

今年度は魚津や黒部沖の水深約30mまでの数カ所の海底湧水域を中心に観測を行い,それらは平均標高800〜1200mに降った降水が地下に浸透して扇状地の伏流水となり,10〜20年をかけて海底から湧き出したものと分かった。また,湧水は,海水の数〜数十倍もの栄養塩を含んでおり,富山の水収支結果を利用すると,海底湧水は河川の1.2〜2倍もの栄養塩を富山湾へ供給している結果になった。さらに,湧水域付近では大きなクロロフィルaの存在量が観測されたことから,海底湧水は,春季〜夏期の植物プランクトンブルームイング発生の支配的要因だと分かり,沿岸生態系へ大きな影響をもたらすことが示唆される。また,富山湾海底地下水の湧出量を測定するために,広い測定レンジを持つフラックスチャンバーを試作し,流量の実測も行った。まずラックスチャンバーの測定感度・精度を測るため,漁港において室外実験を行った。この実験から,湧出量は10から40ml範囲では測定精度±2ml(RSD=5%),45から400mlの範囲において測定精度±10ml(RSD=2%)との結果が得られ,比較的広い範囲(10〜400ml)で淡水性海底地下水の湧出量を測定することが可能にした。実際に4〜12月にかけて,魚津及び黒部の海底湧水域において調査を行った結果,1m^2あたり水深8mでは0.84〜1.27L/min(測定平均),水深22mにおいて0.50〜0.81L/minの湧出量が得られた。一般的に海底地下水の湧出量の変化は,湧水孔が位置する水深,陸上帯水層の地下水位,また海洋での潮汐,波浪,流れ等多くの要因によって支配されると考えられるが,中でも潮位変化によるものの可能性が最も有力であると分かった。
ステータス終了
有効開始/終了日2002/01/012003/12/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥3,500,000

キーワード

  • 海底湧水
  • 栄養塩
  • クロロフィル
  • 沿岸生態系
  • 水収支
  • 流量
  • 潮汐
  • 富山湾
  • 海底地下水湧出