大規模災害が自然資源市場に与える相対的インパクトの評価

  • YAMAMOTO, MASASHI (研究代表者)

プロジェクトの詳細

研究開始時の研究の概要

不動産価格形成などへの影響に比較すると、自然資源、とりわけ農産物及び漁業資源に対して、災害がもたらすインパクトを評価した研究は極めて限られている。そこで本研究は、東日本大震災や大型台風など大規模な災害が自然資源の経済取引に与えるインパクトを、因果推論の枠組みを用いて評価することを目的としている。その際に絶対的なインパクトの大きさだけででなく、同じデータで計測できる他のトリートメントでのインパクトと比較することで相対的なインパクトの大きさを示す。これにより、政策立案者が対策を講じる上での優先順位を示すことができる。

研究成果の概要

本研究では、自然災害が水産資源の卸売価格に与える影響についての3つの因果推論を行なった。具体的なトリートメントとなる自然災害としては、研究開始当初は、東日本大震災による放射性物質の漏洩を想定していた。しかしながら、2020年に起こったCOVID19によるパンデミックを新たな「自然災害」として、トリートメントに加えた。また、3つ目として、2023年夏に実施された福島第一原子力発電所の除染作業で発生しているALPS処理水の海洋放出を取り上げた。いずれの場合も明確なインパクトを見出すことは必ずしもできなかったが、最も影響が大きかったのはCOVID19による最初の緊急事態宣言であった。

研究成果の学術的意義や社会的意義

これまで自然災害の影響に関する経済学の研究は、水害や地震による不動産価値形成に与える影響を分析するものが多かった。影響が受ける期間を鑑みれば、農業・水産業へのインパクトを正確に評価することは重要な意義を持つ。Tajima et al. (2016)によれば、福島県産の野菜の卸売価格への影響は事故から5年以上を経た後も一部で拡大しており、風評被害と呼べる状況が続いていることを指摘している。現状では、自然資源、とりわけ農産物及び漁業資源へのインパクトを評価した研究は極めて限られていることを考慮すれば、本研究は数少ない評価事例として意義があると考える。
ステータス終了
有効開始/終了日2019/04/012024/03/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥3,380,000

キーワード

  • 自然資源管理
  • 自然災害
  • 水産資源
  • COVID19
  • 自然資源
  • 大規模災害
  • 漁業
  • ESG投資
  • 回帰不連続デザイン
  • 水産卸売市場
  • 災害