古代末期-中世前期キリスト教思想における原罪観の変遷の研究

  • 松崎, 一平 (研究代表者)

プロジェクトの詳細

研究概要

2 アウグスティヌスの生きた時代、彼と教養を共通にする人びとは、現世に対して概ね懐疑的で、キリスト教の来世的救済観に厳しく共鳴し、人間の内面の制御しがたさを自覚し明らかにすることに熱心であった。彼は徹底的に時代的であったがゆえに、普遍的なものに触れ得た。アンセルムスも同様である。彼は時代を担う階層の出であり、関わりを持つ人々は、これから社会の中核を構成する活力ある人々であって、彼の人間観=原罪観はこのような人々を念頭に置いていた。西ローマ帝国の衰退期に彼岸を脳裏に置いて生きたアウグスティヌと、中世盛期初頭に此岸の権力と交渉しつつ生きたアンセルムスとは、後者が前者の忠実な弟子と自認していたにしても、重大な差異があり、それは古代地中海世界から西欧中世世界への変質の如何を確実に反映している。原罪観の変遷の背景は、このように説明できる。
ステータス終了
有効開始/終了日1995/01/011995/12/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥1,100,000

キーワード

  • アウグスティヌス
  • 中世キリスト教思想
  • 原罪
  • アンセルムス
  • ボエテイウス
  • 西洋中世哲学