プロジェクトの詳細
研究概要
LIDによる実験法とは、一つの炭酸ガスレーザーで特定の核スピン異性体分子だけを赤外励起することにより濃縮し、その後の核スピン異性体間の緩和過程をもう一つのプローブ炭酸ガスレーザーの光吸収量で測定するものである。本研究では、炭酸ガスレーザーの10ミクロン帯P44発振線を光変調器で30MHzずらした光源を用い、B_<2u>-C_2H_4異性体をLID法により分離した。測定した濃縮割合は約3%であった。5本の赤外遷移を使って、濃縮した異性体と他の異性体間の変換過程を調べた。実験により、B_<2u>とB_<3u>間およびA_gとB_<1g>間の変換を示すシグナルが観測された。また、異なるパリティーを持つレベルを結びつける分子内の相互作用はないことも実験から証明された。この変換速度の測定に成功したのは世界でも初めてである。変換速度の圧力依存性を調べると、圧力をpとして[(5.5±0.8)×p+(1.8±1.3)]×10^<-4>s^<-1>の値が得られた。この線型の圧力依存性から、エチレン分子の核スピン異性体の可能な変換メカニズムには、分子の特定のレベルと相互作用する近傍の異性体レベルとの間の衝突緩和による再分布が効いていることがわかった。我々の実験結果は、星間分子の分子進化の過程を推論する際に必要となるパラメーターを提供することになり、また、回転レベル間のスピン-スピン相互作用やスピン-回転相互作用の研究に重要な実験データを提供することにもなる。
ステータス | 終了 |
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有効開始/終了日 | 2005/01/01 → 2006/12/31 |
資金調達
- Japan Society for the Promotion of Science: ¥2,300,000
キーワード
- 核スピン異性体
- 光誘起ドリフト(LID)
- 異性体の分離と変換
- 変換速度
- 変換メカニズム
- 炭酸ガスレーザー
- 分子科学
- 天文学