スルフェン酸類の合成と反応

  • 作道, 栄一 (研究代表者)
  • 島崎, 長一郎 (研究分担者)
  • 吉村, 敏章 (研究分担者)

プロジェクトの詳細

研究概要

スルフェン酸は一般的に非常に不安定で単離された例がわずか8例しかないことからほとんど研究が進んでいない。従ってこの分野では安定なスルフィン酸の合成法を開発する必要がある。本研究ではtransーデカリンの9位のように4つのアキシャル水素によって立体的に保護されたスルフェン酸の合成を目指した。方法は以前から研究を行なってきたアルキルαーメトキシアルキルスルフォキシドのαーメトキシアルキルスルフェネ-トへの転位及び酸加水分解反応を利用した。その結果、transー9ーデカリルメトキシメチルスルフォキシドは速やかにスルフェネ-トへ転位するがその後異常に安定で加水分解が起こらないことが分かった。しかしながらスルフォキシドを直接過塩素酸で処理することにより高収率でtransー9ーデカリンスルフェン酸を結晶状態で得ることに成功した。このスルフェン酸は不飽和結合やスルフェニル基以外にヘテロ原子を含まない初めて例である。熱安定性は30℃では寿命が30分程でスルフォミ酸やジスルフィドに分解すること、アルカリ条件下では急速にチオ-ルスルフィネ-トに分解するが弱酸性では比較的長時間安定に存在することが分かった。その他スルフェン酸の構造を証明するために種々の反応を行なった。このように立体的にかさ高いスルフェン酸の合成法を見い出したことは今後、いままでそのかさ高さのために合成できなかったスルフェン酸の合成へと道を開くものである。一方、tーブタンスルフェン酸の脱水縮合によるチオ-ルスルフィネ-トへの分解反応を過塩素酸触媒下分光光度計を用いて速度論的に検討した結果、pH2〜3付近で反応が1次速度式に従いpHー速度プロットでピ-クが現われた。通常の機構では2次反応が予想されるのと矛盾しており、この反応の機構についてはさらに触媒効果等の検討をする必要がある。
ステータス終了
有効開始/終了日1991/01/011991/12/31

資金調達

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥2,000,000

キーワード

  • スルフェン酸
  • スルホキシド
  • チオ-ルスルフィネ-ト
  • transーデカリン
  • チオ-ル
  • ジスルフィド
  • 脱水縮合
  • 反応速度