本研究では、伝統的に「質形容詞」と呼ばれてきたコリャーク語の形式(N形)を取り上げ、名詞と動詞の連続相の中で捉えなおすことにより次の研究をおこなった。(1) 執筆中のコリャーク語文法記述の、形容詞と動詞の境界部分の精緻化をはかった。特に、事物の恒常的な性質を表わすN形式と一時的な状態を表わすKU形式の違いを明確に記述した。(2) 同系の他言語の形容詞の顕現の仕方の違いは、それぞれの言語の動詞の屈折体系の違いともかかわっている可能性があることを指摘した。(3) 言語類型論的にN形を位置づけた。(4) 逆受動構文、自他対応、名詞化など、形容詞の周辺の関連諸現象についてもあわせて考察を加えた。