回復期病棟入院患者における運動継続予測尺度の作成

福元 裕人, 福島 洋樹

Research output: Contribution to journalArticlepeer-review

Abstract

【はじめに、目的】回復期病棟入院期間は再発予防のための運動指導や運動の習慣化の役割も担う。しかし、退院後に運動継続できているか確かめることは困難である。今回、退院前のアンケート調査と退院後の運動時間記録から、退院後の運動時間を予測する「運動継続予測尺度」を作成し、共分散構造分析により心理構造モデルを検討した。

【方法】退院前アンケートを因子分析し、信頼性の評価としてα係数を求める。退院後の運動時間との相関分析により妥当性の検証を行う。運動時間に影響を及ぼす心理構造を明らかにするため、共分散構造分析を行い、モデルの適合を確認する。

 (1)退院前アンケート:運動行動継続に関する心理学の既存モデルや理論を元に作成した「退院前アンケート」を退院前一週間の期間に実施した。38項目を設定し、回答は1.全く当てはまらない、2.あまり当てはまらない、3.どちらとも言えない、4.まあ当てはまる、5.当てはまるの、5段階のリッカート尺度とした。

 (2)退院後の運動時間:運動時間10分もしくは30分につき一枚のシールを、A3のカレンダーに患者が貼るという方法で運動量を計測する。患者は退院時から一カ月後まで記録を行い、事前に渡された封筒に入れて返送する。

【結果】

(1) 退院前アンケート:100件のデータのうち欠損を除く96件のデータを分析対象とした。年齢63.2(±15.8)歳、男性61名女性35名、脳血管障害68名、骨折16名、その他12名、平均在院日数67.3(±34.3)日、FIM合計117.7(±8.6)だった。38項目に対して因子分析を行った。最尤法で因子抽出を行い、ガットマン基準で因子数を決定し、プロマックス回転後に因子負荷量が0.4未満の項目を除外した。25項目5因子に集約され、因子を構成する項目と因子負荷量から、5因子に『態度』、『主観的規範』、『行動の統制感』、『行動意図』、『他者による動機づけ』と命名した。各因子のα係数を算出し、値の低い『他者による動機づけ』を尺度から除外した。合計23項目のα係数はα=0.897となった。23項目4因子の尺度の信頼性は検証された。

 (2) 退院後の運動時間:42件中、返送があった35件のデータを分析対象とした。データの内訳は男性23名女性12名、年齢63.3(±15.9)歳、脳血管障害28名、骨折5名、その他3名、平均在院日数73.3(±36.3)日、FIM合計116.7(±9.2)だった。妥当性検証として、退院後の平均運動時間と「多淫前アンケート」についてPearsonの相関分析を行い、有意な正の相関 (r=.340,p

 (3) モデルの検証:Theory of Planned Behaviorのモデルに当てはめてパス解析を行った。さらに「退院後の平均運動時間」に対して「退院時のFIM」からのパスを加えたところ、R2値とモデル適合度の改善が得られた。

【結論】回復期病棟入院患者を対象に、「運動継続予測尺度」を作成した。退院時の「運動継続予測尺度」の数値から、退院後一ヶ月の平均運動時間をある程度予想できる。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に則って計画し、富山県リハビリテーション病院・こども支援センター倫理委員会申請番号34にて迅速審査を行い、承認を得た。データ処理の際は匿名化と個人対照表を作成し、研究対象となった患者の情報は、個人情報を含まない測定結果のみ入力した電子媒体にて保管する。本研究で実施される「アンケート」と「運動時間記録」は危険を一切伴わない。参加への不同意により不利益は一切生じない。研究の参加は任意であり、同意された場合のみ実施される。同意後の取り消しも可能であることを明示する。

Original languageJapanese
Pages (from-to)C-62_2-C-62_2
Journal理学療法学Supplement
Volume46S1
Issue number0
DOIs
StatePublished - 2019

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