Estimation of atmospheric deposition load and its effects on nutrient dynamics in forest ecosystems using heavy metal isotopes

  • 浦川, 梨恵子 (PI)
  • 佐瀬, 裕之 (CoPI)
  • Ohta, Tamihisa (CoPI)
  • 申, 基チョル (CoPI)

Project Details

Description

Outline of Research at the Start

越境大気汚染物質の流入による森林生態系の物質循環への悪影響が懸念されており、森林の衰退兆候を早期に検出することが求められている。本研究では大気沈着物質に含まれて流入した重金属が森林の林床有機物や土壌に蓄積していることや、同位体比によりその起源を推定することができる点に着目し、国内の多地点で採取された林床有機物や土壌の重金属の安定同位体比の測定を行う。重金属の濃度や同位体比の地理的分布特性と、調査対象地において既に得られている樹木成長の長期的モニタリングデータや土壌の化学特性や窒素無機化特性などとの関係を検討することにより、土壌や樹木成長に大気沈着影響が顕著に現れる閾値の設定を目指す。

越境大気汚染物質の流入による森林生態系の物質循環への悪影響が懸念されており、森林の衰退兆候を早期に検出することが求められている。本研究では大気沈着物質に含まれて流入した重金属が森林の林床有機物や土壌に蓄積していることや、同位体比によりその起源を推定することができる点に着目し、国内の多地点で採取された林床有機物や土壌の重金属の安定同位体比の測定を行う。重金属の濃度や同位体比の地理的分布特性と、調査対象地において既に得られている樹木成長の長期的モニタリングデータや土壌の化学特性や窒素無機化特性などとの関係を検討することにより、土壌や樹木成長に大気沈着影響が顕著に現れる閾値の設定を目指す。

Outline of Annual Research Achievements

2021年度は、地質に含まれているバックグラウンド鉛(Pb)の同位体比を得ることを目的として、次層(10-20cm深)の土壌を分析した。分析対象は、GRENE-ReSINプロジェクトおよび環境省の酸性雨モニタリングのサイトの約60サイトである。土壌はEDTA溶液で可給態Pbを抽出し、Pb濃度はICP-MSで分析した。同位体比は陰イオン交換樹脂で精製した後、マルチコレクターICP-MSで分析した。 これまでに分析が終了しているリター層および表層土壌(0-10cm深)を含めて、Pb濃度の平均値±標準偏差はリターで9.7±8.8 mg/kg、土壌0-10cmで10.7±10.5 mg/kg、土壌10-20cmで5.5±5.4 mg/kgだった。一方、206Pb/207Pbはリターで1.1617±0.0052、土壌0-10cmで1.1674±0.0070、土壌10-20cmで1.1768±0.0092、208Pb/207Pbはリターで2.4468±0.0068、土壌0-10cmで2.4554±0.0099、土壌10-20cmで2.4667±0.0113であり、同一地点で比較すると同位体比は、リター<土壌0-10cm<土壌10-20cmと、深くなるにつれて高くなる傾向があり、下層ほど地質鉛の影響を受けていることがわかった。濃度および同位体比の地理的分布に及ぼす環境要因について、サンプル採取地点の緯度経度、平均気温・降水量、地質鉛濃度、冬季降水量割合、土壌およびリター層の化学性のデータを用い、PLS回帰分析で要因解析を行った。その結果、濃度に影響が大きい要因として、リターで冬季降水量割合、土壌でpH(H2O)だった。同位体比に影響が大きい要因としては、リターと土壌ともに冬季降水量割合だった。これらのことから、生態系外部からのPbの流入経路として、越境性の大気汚染物質が示唆された。

StatusFinished
Effective start/end date2019/04/012023/03/31