浮遊性有孔虫殻Nd同位体比:水塊トレーサー指標としての評価と古海洋解析への実用化

  • 堀川, 恵司 (Principal Investigator)

Project Details

Abstract

有孔虫殻のNd同位体は,試薬等によって有孔虫殻を化学的にクリーニングしても,鉄マンガン水酸化物が殻表面に数%残留するだけで,得られるNd同位体比が鉄マンガン水酸化物に由来する底層水Nd同位体比の値に大きく影響を受ける事が分かった.この事は,堆積物中で続成作用を被むり,鉄マンガン水酸化物の相対量が増加する有孔虫試料では,表層水Nd同位体比シグナルを得ることが困難であることを示唆する.従来の研究(Vance et al., 2004)では,浮遊性有孔虫殻が表層水のNd同位体比を記録していると報告されたが,これまで行ってきた検証実験では,浮遊性有孔虫殻から表層水Nd同位体比を復元するのは技術的に難しいと結論づけられる.また,表層水塊中で生成されるバライトも理論的には有孔虫殻Nd同位体比と同様,表層水のNd同位体組成を保持していると考えられるが,バライト粒子のNd同位体比も表層水のNd同位体とは大きく異なる値を示した.さらに,バライト粒子のNd同位体比は,底層水のNd同位体比とも異なる値を示しており,SEM観察などからも微量に含まれる陸源性バライトやバライトと同程度の比重をもつ重鉱物によるコンタミネーションの影響を反映していると解釈された.したがって,本研究課題によって,浮遊性有孔虫やバライトを対象とし過去の表層水Nd同位体値を得るには,バルク分析ではなく,レーザーアブレーションによる局所分析が最適であることが明確になった.
StatusFinished
Effective start/end date2008/01/012010/12/31

Funding

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥2,400,000.00

Keywords

  • 古海洋
  • ネオジム同立体
  • 有孔虫
  • ベーリング海
  • ネオジム同位体