本研究目的に基づき拡張ヒッグス模型に関し:1.超対称なヒッグスセクターのデカップリングの性質、2.加速器実験での模型の区別・検証の可能性、3.新たなTeV領域でのニュートリノ質量を説明する模型の構築、に分けて研究を行った。1.についてはヒッグス2重項場を4個含む超対称模型のヒッグスセクターに注目した。最小超対称標準模型(MSSM)に対して付加的なヒッグスボソンの質量が、LHC実験で直接発見されない程度に大きい場合でも、MSSMに含まれる荷電ヒッグスボソン等の質量がMSSMの予言からずれ得ることを見出した。2.に関して、ヒッグス3重項場を含む拡張ヒッグス模型をLHC実験での検証法について研究した。この模型では、3重項場的なヒッグスボソンとして、複荷電、単荷電、そして中性でかつCP偶およびCP奇のヒッグスボソンが標準模型的なヒッグスボソンに加えて現れる。電弱精密測定の実験データから、3重項ヒッグス場の真空期待値は2重項のそれと比べて非常に小さくなければならないことが要求されるが、その下でこれらのヒッグスボソンの質量スペクトルに特徴的な予言が現れる。これをLHC実験で測定することにより模型の検証および他の拡張ヒッグス模型との区別が可能であると期待される。LHC実験で、横質量および不変質量分布を用いた解析により、3重項場的なヒッグスボソンの質量を再構成することが出来得ることを明らかにした。3.に関しては、ハイパー荷2分の3のアイソスピン2重項スカラー場Φ_<3/2>を含む拡張ヒッグス模型を研究した。Φ_<3/2>は、先行研究ではほとんど扱われてこなかったが、ニュートリノ質量を1ループレベルで導出する模型に応用できることを示した。またΦ_<3/2>を含む拡張ヒッグス模型では、複荷電スカラーボソンH^<++>が予言され、H^<++>を予言する新たな可能性の一つとなり得る。本研究で他の模型から予言されるH^<++>とLHC実験で区別し得ることも明らかにした。