Project Details
Abstract
中国にあっては,清代,戯曲・小説以外,人形を使った皮影戯・木偶戯がやはり全土で演じられていた。木偶戯は皮影戯と同類とも言うべき系統の傀儡戯で,『西遊記』を主要な演目の一つとしている。皮影戯の影戯詞(台本)がその伝承を断つ中,木偶戯の台詞は残存し,しかも上演されているので,『五天竺』との比較にはいささか都合がよい。その木偶戯『西遊記』では,泉州木偶劇団の《火炎山》が名高い。木偶戯《火炎山》は,小説『西遊記』などに基づく作品であるが,やはり原作のままではない。しかし,日本の『五天竺』に見られる原本の改作ではなく,人形(木偶)の表演を強調するための改編に力が注がれ,全体の内容は,小説『西遊記』と同じである。おそらく,両国の芸能(傀儡戯)に見られる相違の根本的なものは,それぞれの作品が依拠した小説『西遊記』の受容の幅に拠るものではないか,と思われる。また,中国の皮影戯・木偶戯『西遊記』が上演によって享受されていたことは,カナ文化を持った日本の独自性による,とも考えられる。
Status | Finished |
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Effective start/end date | 1989/01/01 → 1989/12/31 |
Funding
- Japan Society for the Promotion of Science: ¥1,100,000.00
Keywords
- 五天竺
- 西遊記
- カナ文化
- 近松梅枝軒
- 貸本
- 木偶戯《火炎山》