ヒスチジン脱炭酸酵素をターゲットとする新しい抗ヒスタミン薬の創薬

  • 栗山, ちなみ (Principal Investigator)

Project Details

Abstract

現在、アレルギー性疾患治療に対して、メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミン受容体拮抗薬、ステロイドなどが用いられているが、これらの投薬によっても疾病の治癒に至らない場合も多い。本研究では、ヒスタミンの生合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(L-histidine decarboxylase ; HDC)を阻害する事によりヒスタミン産生を抑制し、既存の抗アレルギー薬より上流の段階において炎症やアレルギー反応を抑制することを目指し研究を遂行した。まず、胃潰瘍や胃炎など上部消化器障害に適応を持つ漢方方剤について網羅的にHDCに対する阻害効果を調べたところ、安中散に明らかな阻害活性が認められた。そこで、安中散の構成生薬である桂皮、延胡索、牡蠣、茴香、縮砂、甘草、良姜について、それぞれHDC阻害活性を測定したところ、特に延胡索が強い阻害効果を示した。確認のため延胡索を除いた安中散を調製し、HDC阻害活性を測定したところ、安中散を除く前と比べ、阻害率は約1/4まで減弱した。また、HDC阻害成分の単離同定を目的とし、延胡索抽出画分より各種カラムクロマトグラフィーを駆使して、成分を単離したところ、活性成分と思われるプロトベルベリンアルカロイドを複数単離・同定することに成功した。安中散は、やせ型で腹部筋肉が弛緩する傾向にあり、胃痛または腹痛がある場合。特に胸やけ、げっぷ、食欲不振、吐き気を伴う神経性胃炎あるいは慢性胃炎に適応を持つ漢方方剤であることが知られていたが、その科学的エビデンスに関しては充分に解明されていなかった。本研究の成果から、安中散のHDC阻害効果によるヒスタミン生成阻害がその作用メカニズムの1つとして考えられた。
StatusFinished
Effective start/end date2011/01/012011/12/31

Funding

  • Japan Society for the Promotion of Science: ¥2,470,000.00

Keywords

  • アレルギー
  • 生薬
  • 漢方
  • ヒスチジン脱炭酸酵素